職務発明特許の報酬請求について
2005年1月11日付け日本経済新聞に職務発明に関する裁判例一覧が掲載されている

(2005年1月11日付け日本経済新聞夕刊)
青色発光ダイオードをめぐる裁判について
2005年1月11日控訴審で和解が成立。発明の対価6億円・遅延損害金2億4千万円
2004年12月24日控訴審での弁論が終結し裁判長は和解を勧告した。和解が不成立なら2005年3月28日に判決が言い渡される。
2004年1月30日東京地裁は日亜化学工業に対し発明者の中村修二教授に特許を受ける権利の譲渡の対価として200億円を支払えと判決した
日亜化学工業は判決の仮執行停止のため100億円を供託し、控訴するとともに代理人を巨大法律事務所の弁護士に変更した模様。
2002年11月19日中村修二VS日亜化学の事件につき譲渡に対する「相当の対価」についての審理が開始された
2002年9月19日中村修二VS日亜化学の事件につき中間判決があり、中村修二特許は職務発明であること、及び特許権は日亜化学に帰属する(譲渡がなされた)と認定された。譲渡に対する「相当の対価」(中村氏は20億円を請求)について今後審理がなされ最終判決が出される見込み。
参考文献:「真相・中村裁判」 2002.11.18 日経BP社 1500円
2001年8月23日付け朝日新聞1面トップ記事は青色発色ダイオ−ドの特許をめぐって発明者と会社が特許権の帰属と報酬で争っていることを伝えている。訴状の内容は不明なので一般的な解説を加える。
特許法第35条第1項の解釈として、特許を受ける権利は原則として従業者に帰属するから、一般的には、職務で発明をした従業者は譲渡証に署名捺印して会社に特許を受ける権利を譲渡している。この場合、第35条第3項の規定により従業者は会社から相当の対価を受ける権利を有するから、対価が不当に安いと思えば裁判所に訴えるのは正当なことである。裁判所は第35条第4項に基づいて正当な対価を算定することになろう。
仮に、従業者が譲渡証に署名しなくとも会社の勤務規則その他で職務発明についての特許を受ける権利は会社に帰属すると定めている場合(予約承継)は、会社が特許を取得しても違法とはいえない(第35条第2項)。
また、第35条第3項の規定により、職務で発明をした従業者が譲渡証に署名や捺印をするかあるいは勤務規則によって会社に特許を受ける権利を譲渡(あるいは専用実施権を設定)した場合は、従業者は会社から相当の対価を受ける権利を有するのであって、譲渡も専用実施権の設定も行わなかった場合は対価を受ける権利はない、と解釈できる(多数説)。
従って、対価が不当に安いとして訴えると同時に特許権自体を発明者に帰属させることを要求するとすれば特許法第35条第3項に矛盾するのではないかと思われる。
アメリカ特許法には職務発明についての規定が無く、対価の支払いは会社と従業者の契約関係で決まるようである。
2002年1月30日夜のNHKTV番組「特許は誰のものか」では、青色発色ダイオ−ドの特許をめぐる発明者と会社の対立を伝えていた(特許第2628404号)。第1点、発明者が会社に特許を譲渡していないと主張しているのに対し、会社は譲渡証を証拠として提出したらしい。発明者は署名が鉛筆書きでありハンコを押していないから有効な譲渡でないと主張しているようだ。仮に譲渡が無効とされて特許権が発明者に移っても(登録が必要)、特許法第35条第1項の規定に基づき会社は無償の「法定実施権」を有しているので利益を返還する義務はないと考えられる。ただし、この法定実施権は再実施権を許諾することができないと解するのが多数説なので、会社はライセンス戦略の見直しを迫られよう。
第2点、相当の対価として発明者は20億円を請求しているらしいが、これについては裁判所が判断すべき事項と考えられる。
なお、新技術開発センタ−発行の「最新・特許管理マニアル」(1988年発行)には68ペ−ジにわたって日本及び外国の職務発明制度の歴史や法律論・判例が詳細に述べられており(著者・江夏弘・元特許庁業務課長)、研究したい人には必読の論文である。
中村修二教授の特許【特許番号】第2628404号
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- 【発明の名称】半導体結晶膜の成長方法
- 【登録日】 1997年 4月18日
- 【公開番号】特開平4−164895
- 【公開日】 1992年 6月10日
- 【出願番号】特願平2−288665
- 【出願日】 1990年10月25日
- 【特許権者】日亜化学工業株式会社
- 【発明者】 中村 修二
- 【特許の最終存続期限】 2010年10月25日
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